2019年9月14日。
東京都品川区東大井の民家で、住人の無職、木村冨美子さん(85)が殺害された事件で、
殺人容疑で逮捕された夫の無職、木村照雄容疑者(83)が警視庁大井署の調べに対し、
「13日の夕飯時に妻と口論になり頭にきた」と供述していることが14日、同署への取材で分かった。
照雄容疑者は、同日午前3時ごろに自宅で冨美子さんの頭部をハンマーで数回殴打するなどして殺害したとして、逮捕された。
事件後には「家内を殺してしまった。自殺できなかった」などと自ら110番通報していた。
夫からの110番通報を受け駆けつけた警察は、2階の寝室で息絶えている冨美子さんの姿を発見した。
木村容疑者も包丁で自身の腹と太ももを刺して無理心中を図ったが、軽傷だった。
警視庁大井署は同日、殺人の疑いで木村容疑者を逮捕した。
現場の自宅3階に息子一家が暮らしているが、事件には気づかなかった。
近所の人たちは、
「誰もがうらやむ仲のいいご夫婦でした。おふたりみたいな年のとり方をしたいなと思っていたので……」
「奥さんも旦那さんもいつもニコニコしていて、話が好きで、散歩の途中、ベンチで休憩して楽しそうにおしゃべりしているのを見かけたことがあります」
声をふりしぼって話すのは夫婦を知る近隣主婦。
木村容疑者は青森県の出身で、冨美子さんと職場で出会い結婚した。
3畳ひと間からスタート、苦労をともに支え合って暮らしてきたという。
現場となった自宅には約50年前に引っ越してきて、一角で小さな工場を営んでいた。
工場閉鎖後、木村容疑者は、器用な手先を生かし、市井の発明家に。
2012年には、『入れ歯入れ安心安全容器』を特許申請し、その後、登録されている。
また町内の活動などにも積極的に参加していた。
町会関係者によると、木村容疑者は社交的で人当たりがよく、
「木村さんは町会のために力も貸してくれた人。とにかくいい人」
「昼間、近くの飲食店でひとりココアを飲みながら新しい発明品を考えたり、カラオケで北島三郎の『まつり』も好んで歌っていた」
と穏やかな人柄だったことを明かした。
しかし、最近は不安を口にすることがあったという。
「“俺が死んだら妻はどうなるんだ”と言っていました。最近、ちょっとやせてきた木村さんに“大丈夫?”って聞いたら“あれ(妻)のほうが心配。俺は大丈夫”って。」
「奥さんを愛しすぎていたから事件を起こしたのかもと、みんなで話しています」
古くからの知人の言葉。
冨美子さんの健康状態は、1、2年前から腎臓が悪く、透析にならないよう食事と運動で気をつけていたという。
食事も2人で作り、朝晩2人で散歩をしている姿が目撃されている。
冨美子さんに関する声も好意的なものばかり。
「とてもいい方でしたよ。お花が好きで、自宅に咲いた花をよく近所の人に分けてあげていました」
いつも一緒にいる夫婦の姿が近所の人の記憶に残っている中、最近は少し違和感を覚える場面もあったという。
「ご主人、このごろ少し変だったみたい。精神的に参っているというか」という近隣主婦の声も。
事件の前日、冨美子さんと言葉を交わした住民は前触れを感じていたという。
「ひとりで散歩をしていたので“旦那さん、どうしたの?”って聞いたら“行きたくないって言って、寝てる”と言っていました」
木村容疑者の供述によれば「夕食時に口論になり、頭にきて殺してしまった」というが、実際に殺害に及んだのは真夜中のこと。
普段は隣の部屋で寝ていたという孫はその日に限って留守だった。
事件後、近所の寺で冨美子さんの家族葬が営まれた。
人柄を慕う地域の人が参列し、涙で見送ったという。
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